業務システムの投資効果について

かなりクサるほど議論されている点だけども、あるシステムの開発を請け負い、見積り、その数千万〜億するシステムを客に納品し、客がそのシステムを稼動して、「その投資は適切だったか」を評価する尺度として、あくまで開発者側の視点でROIを語るけども、どうも釈然としないものがあって、自分なりにまだ答えは出ていません。
たとえばBSCのような経営手法下ではROIも、「場合によってはその企業の評価尺度になる」という程度の位置付けのはずです。エリヤフ・ゴールドラット氏のいくつかの著書*1によれば、ERPシステムを例にとって、その評価基準は当然費用対金銭的効果(ROIのような)にしつつも、そこへ至る重要な評価指標としてスループットなどのTOC的な?パラメータを与えています(もちろん、それらが結局はカネに繋がっていることが重要なポイントなのでしょうが)。
納品したシステムに投じた資金によって自社のどのポイント(BSCを例にあげるなら財務を含めて4つの観点がありますよね)の改善を狙うのか、そしてそのポイントの「対価」として正当かという点を見ないといけないと思うわけです。エリヤフよろしく企業の最大の目的はカネを儲けることだというのは完全に同意なのですが。あるブツ(システム)の目的から見た対価の妥当性というのも、コンサルテーションの一部だと思いますがコンサルとソフトハウスが別の場合に、ソフトハウスがその投資効果を単純ROIで語ろうしてもうまくはいってないような気がします。

システムを作る側という視点に閉じた場合は、あるプロジェクトの成功は投入した人件費に対して黒字だったか赤字だったかという考え方が、"ROI"の考え方に近いように思います。企業の資本も財の一つですが、人材も財で、少し強引に時間も財だという考えを持てば、「人×時間」(稼動原価という意味でカネに返ってきますが)という財の投資ということになります。
でも、この視点って実際には正しくない、ということを営業の人にはよく言われますよね。例えば「赤字でもやる意味がある」とか「将来の大型案件のために重要」とか。これって、さっきのBSC的な評価尺度で考えるとしっくりくるんですよね。BSCの財務視点だけではなくて顧客(環境)視点で考えれば、この営業さんがいってることが赤字の言い訳や苦し紛れの意見ではありえないわけで。これらの視点も結局は「企業の生存課題や主要目的」に返ってきますから、もちろん将来のカネに繋がっていますからROIだと言えないわけではないですが。
要はそのポイント(スコア)のミックスを評価できるかが重要だけども、近視眼的にROIを叫ぶだけだと、システムを開発する側でもこれだけ評価に違いがあるのに、納品した客先での成功/失敗を議論できるのか、という気がします。

*1:ザ・ゴールからチェンジ・ザ・ルールあたりの話かしらん? うろ覚え